まだまだ寒い日が続いていますが、皆さんおかわりありませんか?
さて今回は昨年12月に第1弾でお話しました耐性菌の続きをお話ししましょう。
抗生物質は人間の治療薬として利用されているだけでなく,家畜や養殖魚類用の動物医薬品に加え,飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進を目的とした家畜飼料添加物としても多量に利用されているのはご存じでしたか?
どれくらい使用されているんというと、農林水産省の資料では、人への治療として約520トン(1998年度)なのに対し、動物治療薬として約1060トン(2001年度)、飼料添加物として約230トン(2001年度)もの量が使用されているとあります。
つまり人への投与量の、なんと2倍以上が家畜や農作物へ投与されているのです。
このため,家畜や魚の生産過程で使用される抗生物質によって、動・植物の体内で抗生物質耐性菌が増加し、さらにその耐性菌が付着した農作物、畜産物や水産物を食べることで、ヒトの体内で抗生物質耐性菌が繁殖してしまい、治療に使われる抗生物質がどんどん効かなくなっていく…ということがいま、懸念されているのです。
では実際、ヒトに使われている抗生物質の内訳はどうなっているのかというと、だいたい100トンが院内で使われ、420トンが外来で処方箋として渡されています。
しかし、なくしたり、また、薬局が開けるのではないかと言うほど、飲み忘れ分などをため込んでいる方も時々いますから、外来分すべてが飲まれているわけではないでしょう。
以上のことからも、どうやら薬の飲み過ぎもですが、それだけでなく、食物からの耐性菌感染の方も考えないといけない時代に入って来てしまったようです。
今一つ日本では耐性菌に対しての関心がないようですが、世界保健機関(WHO)は2011年の世界健康デーのテーマを「耐性菌と戦う(Combat Drug Resistance)」としています。
耐性菌に感染したからといって必ず発症するわけではありませんが、お医者さんの話では、トビヒや中耳炎について、すでに耐性菌に感染している方が多くなっており、使える抗生物質がなくなってきて症状が長引いたり、重症化するケースが増えているそうです。
勿論、体力の落ちたご老人やお子さん、入院患者の方々は死に至るケースも出てきています。
有名な耐性菌としては、「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」、その他には「PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)」というものもあります。
耐性菌を増やさないためには、社会全体で抗生物質の使用を控えることが大切です。
また、カゼには抗生物質は効かないということを是非、皆さんにも覚えておいて欲しいと思います。
効かないのに使うのでは無駄な使用になり、こういった使用が耐性菌を増やすことに繋がるのです。
何に効き、何には効かないのか、抗生物質の特性を知ることも大切でしょう。
今時では、薬についての辞典も出ていて一般の方々も購入が可能ですし、間違った使い方をしないよう、各々が気をつけるだけで歯止めがかかりやすくなるはずです。
私達医師が気をつけることも当然ですが、ぜひ皆さんも、安易に薬を飲まないよう、気をつけてみてください。
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