オリンピックも残すところあと僅か、日本選手は本当に頑張ってくれて、皆さんもさぞや応援に力が入ったことでしょう。
というわけで、応援しながら今日も「ひじき」です。前回の記事を読んで、古くから栄養価が高いとして知られてきたこの「ひじき」に裏切られた!と思う方もいらっしゃるかもしれません(笑)
しかし「ひじき」は悪くない。栄養を多く含むひじきをどうすれば食べられるか、保存できるか工夫した結果だったりするので仕方がないのです。
また一方で、ヒ素の健康被害として、有機ヒ素よりも無機ヒ素のほうが問題であり、その強い毒性からイギリスでは食用を控える勧告が出されてもいます。
イギリスで控える勧告が出たとなるとやはりちょっと無視できません。とはいえヒ素に関しては種類がいくつもあって、どのヒ素が1番危ないのかが判りにくいのも確か。
というわけで、ここでちょっとヒ素についておさらいです。
ヒ素の毒性はヒ素がどのような物質と結びついているかによって大きく異なります。最も毒性が強いのはヒ化水素(AsH3)で、3価の無機ヒ素(亜ヒ酸など)がこれに次ぎます。5価の無機ヒ素(ヒ酸など)は3価のヒ素より毒性が弱く、メチル基などが結びついた有機ヒ素はさらにずっと毒性が弱くなります。
まとめると、毒性の強さは
「ヒ化水素>無機ヒ素(3価)>無機ヒ素(5価)>有機ヒ素」
の順になります。
無機ヒ素を一度に大量に取ると腹痛、下痢、おう吐、麻痺などを起こし死に至ります。亜ヒ酸の致死量は70〜180mgとなっていますが、少量の無機ヒ素を摂り続けた場合、以下のような障害が現われます。また、発がん性や催奇形性があることが知られています。
*無機ヒ素の主な慢性毒性
・神経障害〜手足の感覚異常や脱力感
・皮膚障害〜皮膚の黒変や角化
・肝臓障害〜黄疸、肝硬変
とはいっても大好きな人にとってはやはり食べたいと思う事に変わりはないはず。
ではこのひじきをいかに安全に食べるか、ということですが、
・乾燥ひじきはたっぷりの水で30分以上水戻ししてから調理する。
・水戻しに使った水は、ヒ素が溶け出しているので調理には使わない。
・水戻しした後は、ボールに入れた水で2〜3回洗い、よく水気を絞る。
・茹でるときはそのまま茹でず、1度水戻ししてから茹でる。
以上のやりかたでよいでしょう。
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)は無機ヒ素について、PTWI(暫定耐容週間摂取量)を0.015mg/kg体重/weekと設定しています。
暫定耐容週間摂取量というのは、一生涯摂り続けても影響が現われない、一週間あたりの摂取量です。
たとえば1食に食べるひじきを乾燥重量で5g程度として、水戻しにより無機のヒ素(今回の江東区の調査で最も高い検出量1kg当たり94mgで計算)が50%に減少したとすると、体重50kgの人が週に3回以上(1回当たり乾燥重量5g程度として)、ひじきを食べなければ、暫定的耐用週間摂取量を超えることはないそうです。
また、「生ひじき」や缶詰のひじきが売られていますが、これらは乾燥ひじきを水戻ししたものですので、改めて水戻しする必要はありませんが、調理する前に水でよく洗ってから使うようにしてください。
鉄分だけでなく数々のミネラルなどを含み、栄養価が高いとして有名な「ひじき」の裏側はちょっとショックなものでしたが、ちょっとの手間をかけて摂取量に気をつければ、有害物を取り除きながら豊富な栄養素を摂ることができる優れた食材でもあるのです。……以上、「ひじき」を愛する方々の参考になれば幸いです。引用:東京都福祉保健局 食品衛生の窓関連記事 :今日は「ひじき」