今日は流行の腸内細菌
2015-08-22 14:45
クリケ歯科クリニック
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なんだかんだで更新が滞っている間に、やっと少し気温が低くなってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

今年も熱中症で多くの方々が救急車で運ばれるニュースが多かったですね。熱中症予防には水分補給が欠かせませんが、ここ最近、スポーツドリンクに問題の多い糖分が多量に使われ、逆に水分の吸収を妨げてしまうことが指摘されているのをご存じでしょうか。
水分補給の際、これらスポーツドリンクの多飲は極力避け、出来れば天日塩を、1000mlに9gを溶かした塩水を飲むと良いでしょう。
これは生理食塩水の濃度であり、人体に一番なじみやすい水として医療機関で使用されるものでもあります。少し気温が下がってきたとはいえ、湿気が多く、やはり蒸し暑さはなくなっていないので、まだまだ水分補給は必要ですから、気をつけて下さいね。

さて、今日は「腸を考える時代が到来!」と題して、最近良く聞く『腸内フローラ』『善玉菌』『悪玉菌』についてお話ししましょう。

人の腸内にはおよそ1000兆個の細菌が生息していると言われています。しかし、今だに不明なことが多く、謎に包まれています。腸内細菌はビフィズス菌、乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)に代表される『善玉菌』、便秘、老化、生活習慣病の原因となるウェルシュ菌、大腸菌などの『悪玉菌』、それからバクテロイデス、ユウバクテリウムという、どっちつかずの『日和見菌(ひよりみきん)』に分けられます。

我々の健康はこれらの種類や比率により変わって行きます。「腸内フローラ」という生態系はこの3種のバランスにより、理想的な形に保たれています。(健康な人だと、善玉菌:2 悪玉菌:1 日和見菌:7)。

しかし、順天堂大学の小林弘幸先生の先月7月のセミナーでは、『善玉菌、悪玉菌』の呼び名はおかしいと言っていました。というのも、善玉菌の中にも、体に有害な作用をもたらすものもあり、悪玉菌の中にも有益な作用をするものもあることが分かって来たというのです。そのことから今後はこの呼び方を改善するとのことでした。
企業も、ことさら腸内環境改善が収益に繋がると判断し、この10年で以前の30倍の論文が出て来ているそうです。また、腸は非常に頭が良く、なんと脳の細胞の、全ての種類を持ち合わせているそうです。

ここのところ、腸と脳は繋がっているという話があちこちで出てくるのですが、こう考えると、腸の健康が体の健康に結びつくというのは確実ですね。進化論的にも、脳は腸から生まれたそうで、実は腸こそが第一の脳なのです。

赤ちゃんは、胎内にいる時は無菌状態ですが、生まれて数時間後にはもう、大腸菌などが現れます。それが24時間後には、便1gあたり1000億個以上にもなるそうです。一方ビフィズス菌も生後3日あたりから増え始め、大腸菌を逆転していきます。両者の比は100倍にも広がります。しかし、離乳と共に腸内比率で95%を占めていたのが20%程度に落ち着き、以後も優性のまま横ばいが続きます。

大腸菌なども健康な人では大きな増減はありません。そして、日和見菌が増えていくのです。細かな比率は、加齢、また朝晩など時間帯でも変化がありますが、この離乳時のラインナップは長く続きます。
しかし、年と共にビフィズス菌が減少し人によっては大腸菌よりも減少してしまうケースもあります。ですから、この比率を変えないような、ケアが必要なわけですね。

ではここで、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と歯周病についてお話ししましょう。

■歯周病
歯周病はう蝕とならんで口腔の二大疾患と言われていますが、最近の研究では歯周病はメタボリックシンドロームのような生活習慣病だけでなく、早期低体重児の出産、心臓血管系疾患、誤嚥性肺炎の誘因となる、という研究が数多く発表されてきています。

歯周病は国民の約80%以上が感染し、推定患者数は6000万人、更に軽い歯周病の人も加えた15歳以上の有病率74.12%、患者数は8000万人以上にもなると言われています(厚生労働省平成23年度歯科疾患実態調査)。

■腸内細菌叢と歯周病との関係
新潟大学大学院医歯学総合研究科山崎和久先生の研究では、代表的な歯周病原細菌であるジンジバリス菌をマウスの口腔から投与したところ、腸内細菌叢を大きく変化させ、全身的な炎症を引き起こすことが示されました。これは歯周病菌を飲み込むことで腸内細菌叢が変化し、免疫応答に影響を及ぼす、ということを表します。

これまで歯周病は、歯周炎組織を介した菌血症や、局所で産生された炎症性サイトカインによって引き起こされた全身の軽微な炎症の影響によりメタボリックシンドローム関連疾患のリスクになると説明されてきています。
一方で、腸内細菌叢の変化が同様にメタボリックシンドローム関連疾患の発症や進行に関わっていることが明らかとなってきており、結果、歯周病と腸内細菌叢との結びつきが明らかになったといえます。

この実験では、ジンジバリス菌は胃を通過し生きたまま腸管内に到達するものの、定着あるいは増殖によるものではなく、腸管の上皮細胞同士を結び付けているタイトジャンクションと呼ばれる部分に障害を生じさせ、その結果腸内細菌が産生する毒素(エンドトキシン)が体内に入り込み、血中の毒素レベルが上昇することで血流を介して全身に軽微な炎症を引き起こし続けることが歯周病と全身疾患を結びつけている原因と示唆されました。

更に、ジンジバリス菌を口腔投与すると、大腸および小腸のリンパ球が増加し、腸管での免疫応答に影響を及ぼしていることがわかりました。今後、変化した腸管免疫がどのような影響を及ぼしているか検討されるようです。

■歯周病菌と短鎖脂肪酸との関係
これまで、歯周病菌が腸内細菌叢を変化させることでの悪影響を見てきましたが、歯周病菌が産生する短鎖脂肪酸、特に酪酸が口腔内では歯周病の原因の一因であると言われていることをご存知でしょうか。

酪酸は大腸においては腸上皮細胞のエネルギー源として利用されていますが、一方で口腔内ではプラークの蓄積に関与する細菌の発育を著しく促進し、ジンジバリス菌などの歯周病原因菌が更にプラーク内に定着しやすくなると言われています(日薬理雑誌144,81〜87 2014)。

……ではここまでのことをまとめてみましょう。

今まで歯周病は様々な全身疾患、特にメタボリックシンドローム関連疾患のリスク要因であると言われてきましたが、歯周病との直接的な関連性については明確ではありませんでした。
今回、歯周病原細菌を毎日大量に飲み込むことで腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸内での有害細菌の比率が高まり、エンドトキシンと言われる毒素の産生が増加し、体内に流入することで全身に炎症が生じ、様々な疾患に結びついていることが示唆されました。

歯周病は、ブラッシングによりプラークコントロールを行うとともに、適切な歯科治療を行うことが重要ですが、ビフィズス菌などの有用菌を積極的に摂取し、腸内環境を日々整えることでより治療効果が高まるのではないかと考えられます。

しかし、理想的なプラークコントロールを個人で行うことは難しいことから、クリニックでの定期的な清掃がおすすめです。
よく患者さんに「口は内臓、つまり体の入り口ですよ」とお話しさせて頂いていますが、まさにその通り、ということが証明された研究ですね。


 
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